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2007年5月23日(水) 北海道新聞にNSMB論文に関する記事が掲載

 がん促進タンパク質解明
 北大大学院 稲垣教授 新薬開発に期待
 がん細胞内でがんの進行や転移をもたらすタンパク質の分子レベルの構造について、北大大学院薬学研究科の稲垣冬彦教授(構造生物学)らの研究グループが解明し、二十二日の英国ネイチャー系科学誌の電子板で公表した。人の体内でがんを進行させるタンパク質をターゲットとした抗がん剤など創薬分野への応用が期待される。
 研究グループが注目したのは細胞のがん化を促進させる「Crk(クラック)1」と呼ばれるタンパク質。健康な人の体内に含まれる通常の「Crk」は「SH2」「nSH3」「cSH3」の三つの分子で構成されるが、稲垣教授らは通常の「Crk」から「cSH3」を人為的に取り除くと、Crk1に極めて近い状態になることを発見、分子の結合の構造や形状も突き止めた。これを細胞に入れると、細胞の運動性が激しかった。こうした解明は世界で初めてという。
 がんなどの疾患は、体内で作られるタンパク質の異常に起因することが多く、タンパク質の構造や機能を解析することにより、その働きを制御する薬の開発などへの貢献が期待されている。
 新たな治療展開へ
 長嶋和郎・北大名誉教授(病理学)の話

 Crk1が蓄積した細胞は、がんの進行や転移を引き起こす悪性腫瘍(しゅよう)となる。細胞内の分子レベルの構造が解明できたことにより、たんぱく質内部の特定の位置に付着させる抗がん剤の開発など。がん化の進行を阻止する新たな治療に展開できるだろう。
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2006年6月20日(火)北海道新聞に産学連携研究組織「BioDoX」に関する記事が掲載

 新薬開発 支援します
 北大とバイオベンチャーのジェネティックラボ(札幌)、IT企業のシーズ・ラボ(同)などは十九日、医薬品開発支援サービスなどを行う産学連携の研究組織「BioDoX(バイオドゥエックス)フォーラムを二十日に設立すると発表した。独自のノウハウでタンパク質の立体構造を明らかにし、がんなどさまざまな病気に有効な薬の元となる物質などを分析する。国内では極めて珍しいサービスで、新薬開発でしのぎを削る国内製薬会社などの利用を見込んでいる。
 会長には、タンパク質の構造解析の権威の稲垣冬彦・北大大学院薬学研究科教授が就任し、抗がん剤の研究で著名な松田彰・同教授が技術顧問となる。タンパク質の測定データを、独自のソフトウエアで処理してタンパク質の構造を明らかにし、タンパク質と化学物質を混ぜた際の相互作用なども測定・分析するという。
 組織は、経済産業省の地域新生コンソーシアム研究開発事業の成果を実用化するため設立する。タンパク質の測定装置など研究設備は主に北大の既存施設を使い、同研究科のノウハウを活用する。研究を依頼する企業や研究者は、同フォーラム会員と個別に契約を結び、研究費を払う。
 がんや遺伝病などの病気は、体内で作られた異常なタンパク質が原因で発生することがある。異常なタンパク質にくっつき、その機能を止める物質を作れば、薬となる可能性があるため、医薬品開発には、タンパク質の構造解析と化学物質の相互作用の解析が欠かせなくなっている。

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2006年6月20日(火)日刊工業新聞に産学連携研究組織「BioDoX」に関する記事が掲載

 ベンチャーとたんぱく質解析
 北海道大学など北海道内の大学が研究成果の実用化を競い始めた。研究者が自ら起業したり企業との共同事業など手法は様々。最先端のバイオ技術に加え、地域特性を生かした雪氷による冷熱利用、寒冷地対応の福祉ロボットなどユニークな研究が相次いでいる。
 北大は最先端バイオ研究開発拠点の「次世代ポストゲノム研究棟」に、たんぱく質の構造解析に使う核磁気共鳴(NMR)装置を五台設置。大手製薬会社などへの技術移転を目指している。研究プロジェクトを引っ張るのが大学院薬学研究科の稲垣冬彦教授だ。
 たんぱく質の仕組みを正確に把握できれば新薬や新しい治療法の開発につながるため、国も解析に力を入れている。稲垣教授の研究室は国のプロジェクトを担う中核拠点にも選ばれた。
 稲垣教授は情報技術(IT)ベンチャーのオープンループやシーズ・ラボ(札幌市)、バイオベンチャーの生物有機化学研究所(同)など五社と組み、迅速にたんぱく質を解析するソフトの開発に着手した。
 このほか北大では、薬学研究科の五十嵐靖之教授が生物有機化学研究所、花王、化粧品原料などを製造するオリザ油化(愛知県一宮市)などと共同で肌の健康に効果のある食品の研究に取り組んでいる。
 オリザ油化が米ぬかからセラミド成分を抽出し生物有機化学研究所が精製。五十嵐教授らはセラミドを人工的になくしたマウスに、抽出成分を投与し、肌への効果やメカニズムを確認する。二〇〇六年度をメドに機能性食品の開発を目指す。
 北海道経済産業局によると、道内の大学発バイオベンチャーは二十一社(二月上旬現在)。このうち北大発が十三社を占める。なかでも道内の産学官から期待を集めているのがバイオイミュランス(札幌市)だ。
 同社の研究開発担当取締役は北大遺伝子病制御研究所の西村孝司教授が就任。武井正直・北洋銀行会長は最高顧問、健康食品開発のアミノアップ化学(同)の小砂憲一社長が取締役となるなど、産学が一体となり経営をサポートする。設立時には北海道ティー・エル・オー(札幌市)の支援を受けた。
 西村教授は人の免疫バランスに関する専門家。VB設立を機に、患者の血液や骨髄から取り出したリンパ球から人の免疫力を高める細胞を培養して、再び患者に投与して免疫力を回復させる「細胞治療」に関する研究を強化。三年後をメドにガンや花粉症などアレルギー疾患の治療法や治療薬の開発を目指す。




2004年2月23日(月)日経産業新聞の特集、テクノエリア札幌にて紹介

 タンパク質の働き解明
 タンパク質の分子は、細胞内での化学反応や情報伝達といった生命現象を担っている。だが、数万種といわれるタンパク質の大部分は、どんな機能をどのようにして働かせているか分かっていない。これを明らかにできれば病気の原因を突き止めて、新しい治療法や新薬の開発などに役立てることができる。タンパク質の立体構造解析の第一人者である稲垣冬彦・北大大学院薬学研究科教授に、タンパク質の巧妙な仕組みについて聞いた。
 「例えば、インシュリンというホルモンが細胞表面の受容体(タンパク質)にくっつくと、細胞に糖をどんどん取り込むスイッチが入り、その信号が細胞内に伝えられてシステムが動き出します。受容体の信号があるタンパク質の構造を変え、これが別のタンパク質に働きかけて、といった具合に遺伝子まで伝達され、目的の物質をつくらせるのです」
 --スイッチが入る仕組みが分かれば医療にも役立つと。
 「タンパク質の構造と機能を探ることは、生命現象を明らかにするのと同時に、薬の開発につながります。病気に関係した機能が働かないようスイッチをふさぐ物質や、逆に構造変化を促してウィルスに対抗する成分をつくる物質をデザインすればよいのです」
 --構造解析関連の設備も国内有数の規模だそうですね。
 「磁場の大きさを示す共鳴周波数が八百メガヘルツのNMR(核磁気共鳴装置)とエックス線構造解析装置を備えており、世界的にみても最高レベルの研究施設です。これらを使い、生命を支える機能のスイッチがタンパク質の立体構造のどこにあるのか、一つでも多く解明したいですね」
 細胞内シグナル伝達
 五年間で三千種以上のタンパク質の基本構造と機能を明らかにする文部科学省の「タンパク3000プロジェクト」で、稲垣教授は「細胞内シグナル(信号)伝達」関連の拠点リーダーを務めている。
 稲垣教授は「タンパク質が働く仕組みは芸術的ですらある」と言う。例えば「好中球」という白血球は、病原菌などを細胞内に取り込み、活性酸素で殺菌する。だが、活性酸素は人体にも有害なため、細菌を取り込んだ時だけ発生させるよう厳密に制御されている。発生装置のタンパク質は単独では働かない。「細菌が来た」という信号によってスイッチ役の別のタンパク質が構造を変え、発生装置タンパク質に結合しないと機能しないという。
 最近の成果には、抗ウィルス作用を持つインターフェロンを細胞内で生成する仕組みの解明がある。スイッチ役のタンパク質は、一端にかぎ穴のようなへこみ、もう一端がかぎのように出っ張った構造をしている。ウィルス感染の信号を受け取るとかぎ部分の性質が変化、電気的に引き合いペアになる。ペアになると別のタンパク質と結合でき、これがDNAに働きかけてインターフェロンをつくる。
 現在、培養細胞からつくったインターフェロンは肝炎治療などに使われているが、稲垣教授は「体が本来持っている機能を使ってインターフェロンを生み出す新薬ができるかもしれない」と意気込む。
 一方で、稲垣教授はシーズ・ラボ(札幌)や生物有機化学研究所(同)などIT(情報技術)、バイオ企業と、立体構造自動解析ソフトの開発に取り組んでいる。NMRでのデータを取得から構造決定まで半年以上かかるが、数日程度に短縮することを目指している。




2003年12月12日(金)北海道新聞に北大北キャンパス紹介に関する記事が掲載

 抗ウイルス薬としてC型肝炎治療などに使われるインターフェロンを、人体内でつくらせる制御因子の構造と働く仕組みを、北大大学院薬学研究科の稲垣冬彦教授(構造生物学)と高橋清大研究員らの研究チームが解明した。インターフェロンを直接投与するのではなく、人体に備わった防御機構を活用した新薬の開発につながる成果で、英科学誌ネイチャー・ストラクチュアルバイオロジーの十一月号で発表した。
 インターフェロンはヒトの白血球などでつくられるタンパク質で、ウイルス感染から体を守る働きが知られている。
 稲垣教授らが着目したのは、細胞内で遺伝子に働きかけてインターフェロンをつくらせる、タンパク質でできた“スイッチ役”の因子「IRF−3」。
 ウイルスを感知するとIRF−3同士がくっついてペアになる。このペアが核内に入りDNA(デオキシリボ核酸)をほどく役割を果たすタンパク質と結合。遺伝子に働きかけてインターフェロンをつくらせる。
 稲垣教授らは、X線結晶構造解析装置などでIRF−3の立体構造を解析。IRF−3の一端に鍵穴のようなへこみがあり、鍵となる部分がリン酸化されマイナスの電荷を帯びることで、電気的に引き合い、結合することが分かった。さらに、ペアになるとマイナスの電荷を帯びた領域ができて、プラスに帯電しているDNAをほどくタンパク質と結びつくことを解明した。
 従来、IRF−3の存在とそれがインターフェロン生成に重要な役割を果たすことは分かっていたが、どのような過程で機能を発揮するかは分かっていなかった。
 大腸菌などを利用し人工的に生成したインターフェロンは肝炎治療薬などに使われているが、発熱や思考力低下などの重い副作用を引き起こすこともある。稲垣教授は「IRF−3を活用した新薬ができれば、副作用を抑えた治療法に役立つ可能性がある」といい、さらに研究を進めている。
 消化器がんを研究している札幌医大第 一内科の今井浩三教授の話
 IRF−3分子の構造が判明したことは、より効果のある治療法開発に役立つ可能性がある。またIRF−3は、消化器で異常を起こしがん細胞を増殖させる細胞内分子と構造がよく似ていることから、がん治療の分野でも研究の展開が期待できる。




2003年7月 財界さっぽろ誌上のEye2003にて

ノーベル賞の田中さん"二度目の札幌"
 「札幌に来たのは大学時代に貧乏旅行をしたとき以来、二十年ぶりです」
 昨年十二月のノーベル賞受賞で一躍、有名になった島津製作所の田中耕一さん。
 その田中さんが、六月二十三日から三日間、札幌コンベンションセンターで行われた第三回日本蛋白質科学会に、ゲスト講演者として招かれた。
 講演の中で田中さんが「私は学者ではなくエンジニア。二十年にわたり、実験から製品の販売まですべての工程に関わってきたのは、ひとえにユーザーの皆さまに喜んでもらいたいからです。これからもエンジニアとして、世界に役立つ技術を開発していきたい」と"生涯・エンジニア"を強調していたのが印象的だっ た。
 「もう、そっとしておいてください…」というセリフでも知られるように、田中さんはマスコミが大の苦手ということだが、今回は本誌のわがままを快く聞いてくれ、ビュートリッヒ教授、稲垣教授と一緒にハイチーズ。ありがとう田中さん、今後の活躍を期待しております。




2003年6月21日(土)北海道新聞紙上のひとコラムにて、紹介されました

 ヒトの全遺伝子情報(ゲノム)が解読され、世界のバイオ研究のテーマは、ゲノムが作り出すタンパク質に移ってきた。「体内ではたくさんのタンパク質が相互作用しながら働いている。この複雑な仕組みを一つずつ解きほぐそうというのが今の研究の流れです」
 北大大学院薬学部教授で、核磁気共鳴装置(NMR)を使ってタンパク質の立体構造を解析する研究の第一人者。
 学会の年会は通算で五十年余りの歴史を持ち、現在の名称での開催は三回目。今回は昨年ノーベル化学賞を受けた田中耕一さん、スイス連邦工科大のクルト・ビュートリッヒ教授も参加。「研究者千人以上が最先端の研究を基に議論します。ビュートリッヒ教授らによる一般市民向けの講演会もあります」とPRする。
 北大でも今春、道内では最大規模のNMR二基を備えた新施設が完成するなど研究環境が整ってきた。「日本の科学技術が世界競争に勝ち残れるか、タンパク質研究は国策になっている」と力を込める。
 東京都出身で東大、都の研究所を経て一九九九年から単身赴任で北大へ。休日はテニスや散策でリフレッシュする。五十六歳。




2003年6月10日(火)北海道新聞にポストゲノム棟800MHzNMRに関する記事が掲載

 先端バイオ研究の拠点として北大の北キャンパス地区で建設が進められている次世代ポストゲノム研究棟の一期工事分が9日までに完成し、糖鎖工学やタンパク質の構造解析などの研究が始動した。脂質や細胞工学などの研究を行う二期工事分も来春完成予定。
 一期工事分は化学系の研究実験棟とタンパク質の構造解析などに使う核磁気共鳴装置(NMR)を設置したNMR棟で、六階建て延べ五千平方メートル。NMR棟は六角形の二つの建物に、磁場の大きさを示す共鳴周波数が八百メガヘルツという道内最大、国内でも有数のNMRを二基備える。
 研究実験棟には、大学院理学研究科の西村紳一郎教授らの糖鎖研究チームをはじめ、日立ハイテクノロジーズ(本社・東京)による寄付講座「糖鎖精密化学講座」などが入っている。また、三千種以上のタンパク質の構造・機能解析を目指す文部科学省のプロジェクト「タンパク3000」に参加する薬学研究科の稲垣冬彦教授、理学研究科の田中勲教授らが研究を進めている。
 二期工事分は六階建て延べ四千平方メートル。薬学研究科の五十嵐靖之教授らの脂質研究チームや遺伝子病制御研究所の西村孝司教授らによる細胞治療などの研究チームが入る。
 次世代ポストゲノム バイオテクノロジーの研究テーマは、ヒト遺伝子情報(ゲノム)の解読が終わり、現在は遺伝子が生み出すタンパク質の構造や機能の研究(ポストゲノム)が主流となっている。次世代ポストゲノムは、タンパク質の情報を細胞に伝える役割を果たす「糖鎖」や「脂質」などの研究を指す。
 複数の糖が連なる「糖鎖」は、タンパク質や脂質と結びつく性質があり、細胞の表面で細胞同士や病原菌などと結びつく媒介となっている。この糖鎖の働きを解明できれば、疾病の予防や治療薬の開発につながると期待されている。




2002年6月10日(月)北海道新聞、未来産業の胎動にてゲノム創薬の記 事が掲載

 時間と費用を短縮
 北大大学院薬学研究科の稲垣冬彦教授の研究室に五月中旬、札幌の情報技術(IT)企業、シーズラボのプログラマーたちが集まった。「このタンパク質の表面構造は…」。生物学の講義のような話に、プログラマーたちは真剣に聞き入った。
 シーズラボは、地勢解析など三次元コンピュータグラフィックス(CG)の分野で高い技術を誇る。稲垣教授は四月から、同社などと協力してタンパク質の「形」を解析し、CGで描いた形と結合しやすい物質の候補をコンピュータを使って探し出す、「創薬システム」の開発に取り組んでいる。
 製薬業界は、遺伝子(ゲノム)情報を活用して新薬を作る「ゲノム創薬」時代に入っている。しかし「有効な物質を絞り込むだけで数年かかる」(ある製薬会社)など作業は膨大だ。稲垣教授らの試みが実現すれば、創薬にかかる時間と費用を大幅に短縮できる。
 稲垣教授は「バイオで活躍できるIT産業が育てば、札幌から新しい産業分野が開ける」とみている。ITベンチャーの集積がある札幌の"地の利"は大きい。
 先行できる可能性
 今年二月、札幌の奥座敷、定山渓温泉のホテルの宴会場で、ちょっと変わった集いが開かれた。北大のバイオ関連の研究者とIT企業の経営者らが、浴衣姿で車座になり、酒を酌み交わす−。日本政策投資銀行北海道支店、北海道ベンチャーキャピタルなどが、新しい交流の場として主催した「IT・バイオ・温泉たまご」だ。
 昨年九月に続き二回目のこの日は、東京、大阪からバイオ関係に詳しい弁護士や大手製薬会社の研究員らを招き、五十人余りが深夜まで意見を交わした。
 あるIT関係者は「バイオの話は私たちにはとても新鮮。バイオ研究にITが役立つことも分かってきた」と意義を語った。
 「バイオとITの相乗効果で新しい産業の創出を」(政策投資銀)というこの集いの構想は、既に緒に就いている。
 バイオとITを融合した、バイオインフォマティクス(生命情報学)と呼ばれる科学分野がある。札幌のソフト会社のオープンループは、一昨年からこの分野に取り組んでいる。
 同社がもともと得意とするのは、インターネットなどで情報を暗号化するソフトやシステムだ。浅田一憲社長は「暗号に必要な高度な数学は遺伝子の解析にも役立つが、これまで、バイオ研究で数学的手法が使われることはほとんどなかった。われわれが先行できる可能性がある」という。同社が開発を始めたヒト遺伝子情報の高速検索システムは、創薬や遺伝子治療の大きな市場を押し開くかもしれない。
 潜在力はほかにも
 バイオ以外にも、IT企業集積の潜在力を生かそうという動きがある。
 札幌市は今春、文部科学省の「知的クラスター(集合体)創成事業」の対象地域に選ばれた。北大を中心とした「札幌ITカロッツェリア構想」の将来性が評価されたからだ。「カロッツェリア」はイタリア語で「車体」、転じて「デザイン工房」という意味もある。
 昨年、同構想を立案した調査検討委員会の委員で北大大学院工学研究科の山本強教授は、デザイン技術などの活用で北海道のIT産業の底上げが可能だという。
 「今の工業製品の多くは、中枢にITがある。顧客から依頼を受けた製品の試作品を短時間に形にできれば、家電などの新製品開発を北海道から発信できる」




2002年4月10日(水)北海道新聞にバイオとIT産業連携に関する記事が掲載

 北大大学院薬学研究科の稲垣冬彦教授の研究チームと札幌のバイオ、IT(情報技術)企業はこのほど、がんなどの病気の原因となるタンパク質の働きを防ぐ薬の候補となる物質をコンピュータを使って絞り込むシステムの開発に共同で着手した。ITとバイオの連携によって、新薬開発の手順を大幅に短縮することが期待される。
 共同研究は経済産業省の補助が決まっており、来春までにシステムの実用化のめどをつけ、将来は大手製薬会社との連携も視野に入れている。
 参加するのはコンピュータグラフィックス(CG)などで技術力を持つシーズ・ラボ(本社・札幌)と、DNA合成で高いシェアを持つシグマ・ジェノシスジャパン(同・石狩)。
 病気のメカニズムとして、特定のタンパク質が体内で活性化することで病気を引き起こすことが分かっている。このタンパク質と結び付きやすい物質を薬として投与するとその働きを抑えることができるため、製薬会社などは薬の候補となる物質(リガンド)の絞り込みに力をいれている。
 稲垣教授の研究チームは核磁気共鳴装置(NMR)を使って、タンパク質の形を解析する研究を続けている。共同研究では、まずタンパク質の組成と形などを分析してCGを描く。別にリガンドの形のデータベースを作成し、このCGと形を比較することで、タンパク質と結び付きやすいリガンドの絞り込みを目指す。絞り込んだリガンドがタンパク質と結び付くかどうかも、NMRを使って検証する。
 システムが完成すれば、これまで数年かかっていた絞り込み作業が、数ヶ月から一年程度に短縮でき、新薬開発の大きな支援になるという。稲垣教授は「タンパク質の構造解析や、リガンドの発見自体が特許につながる。北海道にはITの産業集積があり、うまくバイオ技術と結び付けたい」と話している。






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